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2025年度 広島県公立高校入試 国語 大問2 解説
昨日に続いて大問2の解説に入ります。
そういえば、以前投稿した理科の出題予想の閲覧数がなんと800を超えていました。
びっくりしました笑
では、解説に入ります。
大問2(20点)
例年通りの説明文です。
今回はデザイナーの原研哉さんの『低空飛行』の一部。2022年の作品です。
原さんのブログを一冊にの本にまとめたものです。
原研哉さんは、「低空飛行」というコンセプトを通じて、日本という国を高みから俯瞰するのではなく、地に足をつけて歩きながらその風土や潜在的な価値を見つめ直す姿勢を提案しています。
この中で、彼は現代社会において「わたし」という個人の主語が、「わたしたち」という集団的な主語へと移行しつつあると述べています。
これは、人工知能やインターネットといった技術の進化によって、人々が個々の意識を超えて繋がり、共有する意識が強まっているからだと考えています。
本作品が書かれた2022年、私たちの社会は情報技術の急速な発展により、大きく変化しています。
インターネットやSNSは私たちの生活に深く浸透し、個人の意見や感情が瞬時に共有されるようになりました。
このような状況下で、筆者の原研哉さんは、個人の意識がどのように変化しているのか、社会との関係性がどのように変容しているのかを考察しています。
特に、SNSやインターネットを通じて、個人の意見や感情が瞬時に広がり、共有される現代において、「わたし」という個の概念が相対化され、「わたしたち」という集合的な意識が強まっていることに着目しています。
受験生の皆さんも、普段からSNSなどを通じて個人の意見が社会に大きな影響を与えることを実感しているのではないでしょうか。
作品の背景を知ることで、より深く作品を理解できるでしょう。
問1
読みの問題です。
問2
正しい接続詞を選ぶ問題です。答えはイ しかし
前後の文のつながりを考えましょう。
戦前の反省として故人の尊厳を尊ぶ考え方は”もちろん”共感できる。とした上で、自己の嗜好を押し付ける圧力や、偏差を個性として振りかざす姿勢には疑問を覚え始めていた。と書いてあります。
前半で一般論を認めた上で、自分の意見を述べています。
これを譲歩と言います。
説明文では良くある表現です。
自分の意見だけを主張しても、説得力のあるものとは言えません。
そこでよく使われるのがこの譲歩です。
自分の主張だけではなく、反対意見や一般論にも理解を示すことで、客観性と公平性が伝わり、読者を「なるほどな。」と思わせるわけですね。
では、その他の接続詞の役割も確認しましょう。
- つまり
役割:前の文の内容を別の言葉で言い換えたり、要約したりする際に用いる。
例文:「彼は非常に優秀な学生だ。つまり、どんな課題も難なくこなしてしまう。」
前後の文で言い方は変わっていますが、内容は同じということがポイントです。
- だから
役割:前の文で述べられた事柄が原因や理由となり、後ろの文でその結果や結論を示す際に用いる。
例文:「雨が降っている。だから、今日は傘を持って出かけよう。」
原因・理由+だから+結果・結論という文の構造になるのがポイントです。
ある出来事(原因)が別の出来事(結果)を引き起こす関係のことを因果関係といいます。
この関係を読み取ることは文章を読む上で非常に大事です。
因果関係を示す接続詞「なぜなら」というものもありますが違いがあります。
合わせて解説します。
補足. なぜなら
意味: 後ろの文で述べられた事柄の原因や理由を、前の文で説明する際に用いられます。
例文:「私は今日、学校を休みました。なぜなら、体調が悪かったからです。」
違いがわかりますか?
結果・結論+なぜなら+原因・理由になっていますね。
日本語では主張が最後にくるので、結果を強調したい場合は「だから」を、理由を強調したい場合は「なぜなら」を使うと良いでしょう。
- そして
役割:前の文に加えて、後ろの文でさらに情報を追加する際に用いる。複数の事柄を並列に述べたり、時間的な順序を示す際に用いる。
例文:「彼は本を読み、そして映画を見た。」
「まず、材料を混ぜます。そして、オーブンで焼きます。」
接続詞を意識することで前後の文の関係(原因と結果、対比、追加、列挙など)が分かります。
また、接続詞を理解することで次にどのような内容が来るのか予測することもできます。
読解が苦手な方はやみくもに問題を解くのではなく、接続詞などの学習からやり直すのも大切です。
問3
指示語「そこ」の内容を答える問題です。
問題になっていなくても、指示語が出ていたら何を指しているのか意識することが大切です。
指示語の内容は、それよりも前にあることがほとんどです。
今回も前にあります。しかも直前です。
質の良いメールマガジンやニュースは刻々と変化する動向を正確に捉えていて、そこでは世界の理性と感性の海面に直に触れているような興奮がある。
そことは質の良いメールマガジンやニュースのことですよね。
しかし、これだと40字になりません。
ではどんな質の良いメールマガジンやニュースなのか具体的に書きましょう。
刻々と変化する動向を正確に捉えている、質の良いメールマガジンやニュースですね。
指示語の「そこ」は名詞ですので名詞の形で答えなくてはなりません。
問4
当てはまる適切な語を、2字で抜き出す問題です。
2字だけと思うかもしれませんが、この問題が結構難しいんです。
この大問で1番難しいかもしれません。
設問部分「このような「わたし」はインターネットの〇〇では徐々に払拭されつつある。」
このようなとは、問2にもあったように「自己の嗜好を押し付ける圧力や、偏差を個性として振りかざす姿勢」のことです。
では、これがインターネットの何に払拭されつつあるのか。
多くの生徒は「世界」だと思ったのではないでしょうか。
答えは第2段落にあります。
後半部分でインターネットの世界について書かれています。
インターネットの「世界」には、エゴが剥き出しになっている「表層」と、しなやかで需要力に満ちた「深層」があります。
「自己の嗜好を押し付ける圧力や、偏差を個性として振りかざす姿勢」は表層では受け入れられますが、深層では払拭されます。
なぜでしょうか。本文では、その理由として「新しいインテリジェンスの潮流が生まれ始めているように感じる」と述べられています。
この「新しいインテリジェンス」とは、多様な価値観を認め、互いに尊重し合う、より成熟した知性のことです。
インターネットの「表層」では、匿名ということをいいことに自己主張や誹謗中傷が横行しがちです。
しかし、「深層」では、人々は多様な意見に触れ、議論を重ねる中で、他者への共感や理解を深めていきます。
その結果、自分と異なる意見を持つ人を排除するのではなく、互いに尊重し、協力し合う姿勢が生まれるのです。
つまり、「新しいインテリジェンス」の潮流とは、インターネットを通じて人々が成熟した知性を獲得し、より良い社会を築こうとする動きと言えるでしょう。
このような動きがあるからこそ、インターネットの「深層」では、自己中心的な考え方が払拭されていくのです。
つまり答えは「深層」となります。
Aはこうだけど、Bはこうだよね。という対比関係は説明文で頻繁に用いられます。
対比関係を用いることでそれぞれの特徴や性質が際立ち、読者はより明確に理解することができます。
また、筆者の主張がより明確になり、読者に強く印象づけることができます。
問5
ヒトの生存戦略を具体的に書く問題です。
字数が80字と非常に多いですね。
ポイントとなるのは空欄の前の部分です。
植物とは異なり、という部分です。
つまりヒトと植物の生存戦略の違いを書けば良いということですね。
まず、人間と植物の大きな違いは、自らエネルギーを獲得できないこと、移動できること、脳があることです。
これらは第5段落に書かれています。
「ヒトという生物は、身体を駆使して活動しながら、敏捷に食物を摂取し、自らを維持存続させていかなくてはならない忙しい動物である。」と書いてあります。
さらに、「したがって、身体のあらゆるセンサーから得た情報は「脳」という中枢に集められ、素早い決断が下される。」とあります。
それをまとめたのが傍線部②ヒトは植物のような生命体とは異なる生存戦略を生み出してきた。という部分になります。
この2点をまとめましょう。
植物は理科でも学んだように、種子を飛ばしたり、動物に食べてもらって子孫を残しました。
花粉症の人には天敵の花粉も子孫を残すための方法です。
問6
ある生徒が書いたノートの空欄部分を埋める表現を抜き出す問題です。
抜き出す問題は一言一句そのまま書いてください。
今回は、「わたしたち」への主語への移行を、言い換えれば何からの脱却が必要かということです。
その「何か」を抜き出します。から脱却しなければなりません。
それは最終段落にもあったように「わたし」からの脱却です。
しかし、これではたったの5文字です。
かぎかっこも一字ですからね。
では「わたし」と同じ意味で書かれている部分を探しましょう。
最終段落の中盤に
「わたし」という一世代・一個体にしか適用できない概念には限界が生じ始めている。とあります。
「わたし」=一世代・一個体にしか適用できない概念ということです。
これがちょうど18字なのでここが正解です。
以上になります。
長かったですが最後まで読んだ方は、今後読む上での着目点などが分かったのではないでしょうか。
次は来週3月3日(月)に載せます。